オーラを感じる瞬間

Published 2024-07-03
オーラを感じる瞬間

「毎日、100通前後のメールを受け取っています」
竹重さんは、九州にある山間の田舎町でソフトハウスを
やっている。社員は奥さん一人である。
もともと、竹重さんは、大阪の製鉄会社でコンピューター
プログラマーとして働いていたのだが、30才になったばかりの
2年前突如リストラされてしまった。会社の業績が良くないのと
若い有能なプログラマーがたくさん育ってきているのが理由だという。
大阪で次の職場を探そうとも思った竹重さんだが
「大都会での生活は子供のために良くないし、
人間らしい生活を見つけたかった」
と考えて奥さんの実家のある九州のN町に引っ越した。
 
竹重さんが受け取るメールの9割は、もちろん仕事関係だ。
大阪にいた頃から協力関係にある会社や
九州に来てからネット上で知り合ったSOHO仲間である。
で、残りの1割は、メールマガジンや
全国各地のメールフレンドから来るメールである。
「こんな生活を2年も続けていると、
メールを読んだり、返事を書いたりしていると
本当に相手と話しているような気分になります」
メールの達人の域に達している彼ならではの言葉だ。
 
竹重さんの家から一歩外へ出ると見渡す限り山の緑でいっぱいだ。
近所の人もノンビリしていて、大阪のセカセカした人間から見ると、
誠に失礼だがスローモーションで歩いているように思える。
こんな自然に囲まれながら、メールで多くの人と話をしている
竹重さんは生き生きしてプログラマーというより芸術家のような
風貌になってしまった。
 
こんな素朴なエンジニアの竹重さんが、面白いことを言っていた
「最近、メールボックスに並んだ開封前のメールを
見ると、時々オーラを感じるメールがあるんですよ。
同じ内容のメールでも、オーラが感じられる人
のメールは読むとグッと来ますね」
どんなメールか読んでみたいものだが・・
 
人間の体からオーラが出るという話は、
たしかに聞いたことがある。ある先生は
作者が情熱を傾けた絵や原稿の温度を計ると、
真っ白の紙より、わずかだが温度が高いとも言っていた。
もし、竹重さんが言っていたオーラのあるメールも
温度が高いとしたら、どうやって計るのだろうか・・・
よく「人の心が暖かい」と言う。
あの暖かさは心で感じるものだ。だとすると、
オーラを見たり感じたりする感性も、
心のどこかにあるような気がする。

All Comments (1)