地球最後の日 ゴッドサーバーの発見 (FULL)

Published 2024-06-25
2030年、21世紀のアインシュタインと呼ばれる
能美弥太朗博士は、ついに宇宙空間上に人類の知恵の宝庫
(ゴッドサーバー)を発見した。たちまち、世界中を興奮の
坩堝に巻き込んだ大発見は、国連に集まった世界の首脳たちと
テレビで見守る世界中の人々の前で説明されることになった
国連総長「みなさんご存知の通り、能美弥太朗博士によって、
ゴッドサーバーが発見されました。では、博士」
博士「人間はネットワークの端末に過ぎなかったのです。
われわれの知識経験は巨大なサーバーによって管理されている
のです。人間社会は100億の超巨大なネットワークすぎない
のです。その中枢をつかさどる巨大なサーバーをゴッドサーバーと
私は名づけました。あらゆる人類が有史以来考え創造してきた
知恵や知識は宇宙空間上のゴッドサーバーに蓄えられてきたのです」
不謹慎にも日本首相が米大統領に「マトリックス」と耳うちした。
そして、お互いの肩を叩きながらダハッハハ・・・と笑い転げた
米大統領「ハッハハ・・・博士は古い映画の見過ぎではないのか。
そのような巨大な物体が、なぜ、今まで発見されなかったのか」
能美博士は磁力線解析による太陽系の断面映像を映し出した
博士「お二人は、まだ見ておられないのですか。ゴッドサーバーが
発見できなかったのは色もなく、形もなく、人間には見えない存在で、
しかも、地球に存在する液体でも固体でも気体でもないからです。
20世紀末の10万倍の解析能力を持つコンピューターだからこそ
ゴッドサーバーを見つけ得たのです・・・私は、ゴッドサーバーを
発見した先週末にすぐ画像をダウンロードできるようにしました。
すでに、この画像はアメリカや日本なら家庭用パソコンにでも
入っているはずです。お二人ともお勉強不足ですね」
世界中が見守る中、恥をかいた米大統領に頭を叩かれて
小さくなっている日本首相だった。見苦しい二人を無視して
オーストラリアの女性大統領が質問した
豪大統領「ゴッドサーバーは、人類にとって敵なのですか?」
博士「敵?とんでもない。
人類は、彼によって地球に住む生物の中で唯一進化する
権限を与えられたのです。良く似たものが、ネットワーク管理者が
コンピューターネットワークの端末がサーバーから、
情報やデータを取り出す権限です。
私たち人類は、カンや閃き、インスピレーションとも呼んでいますが、
あれはごく限られた天才たちがゴッドサーバーにアクセスする
瞬間だったのです。その集積がわれわれ人類の繁栄だったのです」
2010年ごろから、世界のIT大国となっているインドの女性首相も
質問した。(ちなみに、この会議の出席者は半数女性である)
インド首相「博士は、ゴッドサーバーを彼と呼びましたが、
ゴッドサーバーは生き物なのですか?」
博士「そう、彼こそ、地球上の多くの宗教が神と奉っていた
存在なのです。数々の教祖たちが、奇跡的なことを起こし得たのは、
ゴッドサーバーにアクセスする術を心得ていたからです」
国連総長「で、博士が人類の危機と言われていたのと
ゴッドサーバーの発見とどのような関係があるのですか」
博士「人類は、20世紀末、それまで、ごく限られた
人たちにしか与えられなかった情報を、無数の人類に
開放しはじめました。インターネットです。
インターネットによって人類が何千年何万年かかって
作ってきた既成概念は崩壊しました。その結果、
今まで考えられなかった量の知識や創造がゴッドサーバーに
蓄積され始めたのです。ゴッドサーバーにも
容量の限界があります。その限界がやってきた時、
ゴッドサーバーはバージョンアップします。
このバージョンアップに、多くの人類は付いて行けないでしょう。
20世紀末に自宅や会社のパソコンやサーバーのOSが
NTや95から98や2000やMEに変わったと
同じような現象です。かつての粗大ゴミと化した古いパソコン
たちの運命と、多くの人類の運命が重なるのです。
ゴッドサーバーがバージョンアップする瞬間、
人間は劇的な変化を強いられます。
対応できない人間は、端末で無くなる。
つまり、人間でなくなるのです。ゴッドサーバーから
見放された人類は、猿やチンパンジーと変わらない存在になるでしょう」
米大統領「それを防ぐ方法は・・・」
博士「すべての情報を消去することです・・・」
 
かくして、地球上に栄えた30数回目の人類文明は、
またしても原始時代に遡ることになった。

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